五頭連峰 菱ヶ岳(981m)、五頭山(912.5m)、赤安山(582m)、烏帽子岩(490m)、扇山 (524m) 2011年5月28日

所要時間 5:45 菱ヶ岳登山口−−7:29 菱ヶ岳三角点−−8:40 五頭山−−8:52 一ノ峰−−9:01 三ノ峰−−9:09 五ノ峰−−9:20 自然の家分岐−−9:44 赤安山−−10:13 自然の家分岐 10:25−−10:39 出湯温泉分岐−−10:52 烏帽子岩 11:02−−11:18 出湯温泉分岐−−11:36 旧スキー場−−11:49 扇山−−12:03 旧スキー場−−12:24 五頭山登山口−−12:33 菱ヶ岳登山口

概要
 村杉温泉奥の菱ヶ岳登山口を起点に菱ヶ岳、五頭山を周回縦走。菱ヶ岳、五頭山とも地元ではメジャーな山で、天候がイマイチにもかかわらずたくさんの人が登っていた。登山道はよく歩かれて危険個所はなく安心して歩ける。ただし自然の家方面の道だけはやや薄く体に触れる籔が多数あり。オプションで赤安山、烏帽子岩、扇山を往復。赤安山山頂は標識が無く北側の平坦地に山頂標識あり。烏帽子岩は大きな花崗岩が重なった開けた場所で展望良好。地形図の扇山山頂へは道は無く、松、笹、灌木の激藪をかき分ける。山頂も籔の中。たぶん昔はスキー場だったと思われる。

ルート図。クリックで等倍表示


 今年は梅雨入りが早く、関東甲信も既に今週梅雨入り。週間予報でも雨や曇りの日が並んでいて週末は前線が停滞し、おまけに台風2号まで接近してくるので土日とも雨の予報。おそらくその予報が外れることはないだろう。雨の中で小さな山に登るのもいいが、まだ北陸は梅雨入りしておらず、週間予報では新潟は土曜日は曇り。残雪が期待できる標高が高い未踏の山は無理だが、新潟県下越の適当な山なら雨に降られずに歩けるだろう。

 地図を眺めて場所を選定。北に行くほど雨の確率が低いので新潟市付近で探してみたところ五頭連峰が目に入った。標高は1000m弱と低いが、この辺りでは高い山である。また、道が整備されて主稜線には延々と道があるし、麓と結ぶ道もあちこちにある。もう残雪の心配も無いから登山口まで車で入れる。うまく周遊できるコースを考えたところ、村杉温泉奥の車道を起点に五頭連峰最高峰の菱ヶ岳と第2位の標高の五頭山を結んで歩くことを考えた。ここなら僅かに車道を歩くが周遊可能、しかも菱ヶ岳、五頭山の他にオプションとして赤安山、烏帽子岩、扇山の3山を加えることが可能だ。現地の天候にもよるが、体力的には問題ないだろう。ただ、扇山は登山道から少しだけ外れた場所にあり、植生によっては苦労の可能性もある。籔が雨に濡れていたら突っ込むのはイヤだし。まあ、現場に行って判断しよう。

菱ヶ岳登山口駐車場 菱ヶ岳登山口

 東京から下越は遠い。最寄りの安田ICまで片道約340km。登山口まで考えれば往復で700kmを越えるだろう。練馬で関越道に乗ってひたすら北上。今年は何度も通った越後湯沢から六日町を越えて小出を通過すれば今年初めての行動範囲に入る。長岡、燕を越えて新潟手前で磐越道に入ると片側交互通行で工事中。高速道路で交互通行なんて初めてだがこの区間は元々片側1車線ずつの構造なので仕方ない。15分毎の切り替えだが数分待っただけでスタートできた。五泉PAで僅かに時間調整し、安田ICを出たのが0:03。大都市近郊区間を含むため料金表示は\1500であった。あとは登山口まで下道を走り、村杉温泉で右に入り、細い路地をさらに右に入って上がっていくと広い駐車場が登場、そこが菱ヶ岳登山口だった。周囲には全く雪は見えない。今回はここをスタート地点とし、この少し奥にある五頭山登山口に下りてくる予定だ。車皆無の駐車場で仮眠した。上空は僅かに星が見えるが雲が多く南風が強かった。明日の天気が気になる。

 今回の行程はさほど長くないのでのんびり起床することに。それでも明るくなってくると車が何台か奥に入っていったが、山菜取りだろうか。朝飯を食ってパッキングをして出発。今日は雨が降る可能性もあり、傘とゴアをザックに入れ、眼鏡に水滴が付着するのを防止するため帽子も入れた。残念ながら今日は日よけとして帽子を使うことはなさそうだ。久しぶりの無雪山行でピッケルやアイゼン、それに防寒着も無いのでザックが軽い。

登山道 村杉温泉からの登山道が合流

 登山口から明瞭な道が始まり、すぐに樹林の斜面を登り始める。杉や松の植林?の中に広葉樹が混じり地面付近は笹や灌木が生えて藪状態で、夏道が無ければ藪漕ぎ必至だ。この標高でこの植生は雪国ならではだろう。尾根上に出るとブナが中心となって濃い新緑の中を登っていく。381m峰から北西に延びる尾根に合流すると、村杉温泉からの登山道に合流するが、今は私が登ってきたルートの方がメインであろう。

440m峰を巻く個所で石碑あり 登山道はこんな感じ
標高530m地点で林道登場 でもすぐに林道終点

 その後は緩やかなブナの尾根を真上を通ったり巻いたりしながら高度を上げていく。440m峰の西を巻く個所では何やら石碑が立っていた。519m標高点東側を通過して530m肩に出ると、稜線南側直下に林道が登場する。地形図で下部の谷に書かれている林道からの続きではないかと思うが、まだ残雪期が終わった直後だからか、それともゲートがあるからなのかは不明だが、最近に車が入った形跡は感じられなかった。530m平坦地が終わって尾根が立ちあがるところで林道は終わっていた。

菱ヶ岳へと続く尾根。たぶん山頂はまだ見えない
630m峰で北側を巻き始める 標高700mくらいで水場あり
まだ残雪があるが水がちゃんと流れている 尾根を登る

 630m峰への登りにかかると登山道は北側を巻き始めるがそこに看板があり、残雪期は尾根上を行くように書かれていた。たぶん今は残雪期ではなく斜面の雪も消えているだろうと巻道に入ると、どこにも雪は無く順調に進んでいく。尾根上の踏跡の濃さはどのくらいだろうか。標高700mくらいで巻道が終わって尾根に復帰するが、そこの東側の谷に道があり「笹清水」の標識があった。まだ残雪が多いが沢が流れて水が得られる場所だった。この頃から断続的に雨が降るようになるが、ほとんど樹林の中を歩いているので傘を出すほどではなかった。さて、この先の天気は悪化するのだろうか、それとも多少は回復するのだろうか。

溝の場所も ブナ林を登る
まだ登る 下界も霞んでいる
五頭山方面へ続く尾根 そろそろ山頂

 ブナに覆われた尾根をなおも登っていくと深い溝と化した場所もあり、かなりの人が入っていることが分かる。雨の日はイヤらしいだろうが今はさほど障害にならない。ブナの高さは高くなったり低くなったりで、尾根の場所により風の吹き方が変わるのだろうか。山頂が近付くと根曲がり木が多くなり、ひょっこりと菱ヶ岳山頂(三角点峰)に出た。

菱ヶ岳三角点峰 菱ヶ岳最高峰へと向かう

 頭上は開けているのだが周囲は低い樹林に覆われて展望がいいとは言えない場所だった。平野方向に少しだけ開けているが今日は雲が多く空気の透明度も悪くてすっきりした展望は得られなかった。三角点があるはずだがちょっと見た限りではそれらしき物体は発見できなかった。宝珠山方向への明瞭な道もあったが、そちらはいつの日か歩きたい。本日は五頭山方向だ。細かい雨が降り続いて開けた場所ではゴアが必要なくらいだが、この植生ならどうにか大丈夫だろう。川内山塊は雲の中だった。

稜線は低い樹林が続く 水場分岐
珍しく雪田登場 五頭山も雨に霞んでいる

 稜線は2,3mの低い樹林が続き、これまた展望はあまり良くない。東側に最高峰の981m峰があったはずだが樹林の中で気付かずスルーしてしまった。雨が降っていて地図を出すのが面倒だったのもスルーの原因だが、特に何も無かったので一般的にはさっきの三角点峰が菱ヶ岳山頂と認識されているのだろう。下り始めると左側に「桂清水」の分岐が登場。どれくらい下がると水場があるのかは確認しなかった。続いて小さな雪田が登場、本日初めて雪を踏んだ。五頭山方面はガスがかかったように煙っており、たぶん雨粒の影響だろうからちょっと憂鬱になる。稜線上は南寄りの風が強く、傘は使えないだろうな。

根曲がり木 コブシかタムシバのどちらか
標高930m肩 標高930m肩
五頭山へと連なる稜線

 標高930m肩(正確には小ピーク)で中の沢方面への分岐が登場、なぜか衛星放送用パラボラアンテナに「与平の頭」と書かれていた。なぜパラボラ? こんな標識は初めて見た。この付近は開けておりモロに雨風が吹き付け、ゴアが欲しいところだった。このまま小雨が続くようならゴアを着た方がいいだろうか。五頭山はガスがかかり始め、天候は悪化しているような・・・。せっかく新潟まで来てこれではなぁ。でも予報は雨も入ってたか。

 小さなアップダウンが続く尾根は先ほどのような開けた場所もあるが、大部分は矮小な樹木が生えて展望が無いが、今は風雨を防いでくれて助かる存在だ。「根曲がり木」も多く、この標高にして相当の積雪があることを物語っている。今は新緑で雪は無く、冬の積雪量がいかほどなのかは分からない。登山道は尾根直上をずっと通っているわけではなく、場所によっては僅かに尾根を巻いている部分もあるが、そのような場所では背の高いブナが生えているところもあり、僅かな地形の変化で植生が大きく変化するのは冬の気候、特に風の厳しさが要因だろうか。

寒さのためか全く動じなかった蛇

 天候は悪く日差しは皆無で気温はさほど高くないと思うが、登山道のど真ん中に蛇が登場。本来ならば日向ぼっこなのだろうがこれでは意味が無い。この蛇、度胸があるのか近づいても全く動じない。それとも気温が低くて動きが鈍いのだろうか? 足で枯葉を蹴り飛ばして蛇にかけても動かず、まあ、これなら噛まれることもないだろうと蛇を跨ぎ越えたが、それでも蛇は動かなかった。体感的な気温は10℃ちょっとと言った程度だと思うが、この気温だと蛇は動けない?? 保護色なのでこのままだと人に踏まれないかなぁ。

ここにも水場があるようだ 890m峰(五頭山/旧スキー場分岐)

五頭山山頂 五頭山山頂の竹竿

 標高873m峰を越えて緩やかに下り、登り返したピーク(標高890m)が旧スキー場分岐ピークで、この奥のピークが五頭山だ。ここまで来ると薄いガスの中に入ってしまい、周囲の様子は見えない。五頭山山頂まで7分との表示もあった。平坦な稜線を進むと周囲の矮小な樹林が少し開けた場所が登場し、そこが五頭山だった。今は雲の中で展望が無いが、南北方向に切り開きがあって展望が得られそうだった。三角点北側の木には高い竹がくくりつけられてあったが、積雪期用の山頂標識か。冬にはいったいどれくらい積雪があるのだろうか。山頂と言っても平坦な尾根の一角で明瞭なピークではなく、刈られた方向以外は樹林に覆われ、スペースもさほど広くはなく、三角点と標識が無ければ通過してしまう場所だったのは意外だった。

910m峰 900m峰。たぶんここが一ノ峰か

 とりあえずこれで本日のメインの2山は終了。続いてオプションの山に向かうことにするが、この天候が続くようではどうしようか。道のグレードが落ちて籔がはみ出しているようだと、間違いなく籔は雨に濡れてこっちもびしょ濡れになってしまう。現場に行って状況を確認して登るかどうか判断しよう。890m峰に戻り西に向かうと登りにかかった。地形図ではこの先は910m峰となっているが、910m等高線が書かれているだけなので正確な高さは不明だ。ガスで展望が無いので五頭山三角点峰とどちらが高いのか目視で比較できないが、歩いた感じではこちらのピークの方が高いような感じも。てっぺん付近は矮小な樹林から笹原に変わり、風雨がもろに吹き付けて少し濡れてしまった。てっぺんには標識等は無かったが、その先の900m峰は露岩と石碑、お地蔵様に鐘が登場した。後で知ったがここは「一ノ峰」と呼ばれているらしい。910m峰も一ノ峰も樹林が開け晴れていれば展望を楽しめそうな場所で、たぶん五頭山に登った大半の人はこちらで休憩していると思う。今は雨の影響で樹林の中に逃げ込みたいけど。

明瞭な登山道が続く 三ノ峰避難小屋

 少し進むと樹林帯に入って雨をよけられて一安心。溝のように掘れた登山道もあり、こちらのコースも人の多さがうかがえる。体に触れる笹等は無いのでこの天気では非常に助かる。標高870m峰で旧スキー場に直接下る尾根と、赤安山や烏帽子岩方面の登山道へとつながる尾根の分岐が登場、そして地形図には書かれていないがピークの東側にかまぼこ型の避難小屋があり「三ノ峰避難小屋」と書かれていた。ここまで下ると雲の層から抜け出し、樹林の隙間から下界が見えるようになり、雨の強さも弱まった。

五ノ峰(860m峰) 五ノ峰から見た菱ヶ岳方面。雲の中
五ノ峰から見た越後平野

 赤安山方面の道は少しだけグレードが落ちるがまだ1級の道で濡れた藪で邪魔されるようなことは無く、とりあえずは赤安山分岐へと進んでみることに。871m峰はてっぺんを通ったか記憶は無いが、その次の860m峰は巻道は気付かず淡々と歩いていたらてっぺんを通っていた。このピークは五ノ峰で、一ノ峰のように樹林が開けて下界の展望が開けた広い場所だった。岩陰で風を避けて休んでいる男性が1名いたが、これから山頂方面に向かうのだろうか。

赤安山方面の分岐 道が細くなる

 五ノ峰を下り、740m肩で赤安山との分岐点が登場。赤安山方向は「自然の家」、旧スキー場方面は「出湯村杉」とベニヤ板に手書きで書かれていた。行政の立てた標識もあるが、案内板部分が地面に落ちてしまっている。ここでメインザックをデポしてアタックザックで赤安山往復に切り替える。赤安山方面の登山道は明らかにグレードが落ちているが明瞭な道が続いているので廃道ではないようだ。濡れた籔のはみ出しを考慮してゴアもザックに入れた。

開けた場所では幼木がはみ出す ここだけ笹が被る。少し濡れていてイヤなところ

 赤安山方面の道に足を踏み入れると格段に道のグレードが下がり、両側からは芽吹いたばかりの木の葉や笹の葉がはみ出し雨に濡れていたが、この標高ではかなり雨量は少なかったようでビショビショではなく、ゴア無しでもどうにか我慢できる範囲だった。籔の高さは膝程度なのでロングスパッツで防御できるのだがザックの中に置いてきてしまっている。ゴアを履くと暑くて汗をかきそうで、半ズボンのまま歩くことにした。しかし木の葉はまだいいが笹の葉は素肌を傷つけ微妙に痒い。開けた場所では幼木が茂り、笹が酷いのは1か所だけだった。

五ノ峰方面を振り返る

 740m肩付近は急激に高度を下げ、その後は緩いアップダウンだ。620m峰の登りでは30人くらいの大集団と遭遇、次から次へと登ってきていつになったら最後尾になるのか・・・。でもこのおかげで籔の露払いはほぼ完璧となり、以降はほとんど濡れなかったのは助かった。こちらのルートから登る人もそれなりにいるらしい。地形図を見ると五頭山、松平山、山葵山と周遊が組めるルートであり、それなりに需要があっても不思議ではないか。

本当の赤安山山頂 赤安山北西側平坦地に山頂標識あり

 570m鞍部を通過して少し登り返すと赤安山山頂と思われるピークに到着したが、赤布がかかっているだけで山頂標識が無い。740m肩で赤安山の文字があったくらいなので標識が無いはずは無いともう少し先まで歩いてみると、570m平坦地に広場があってここに赤安山の標識が立っていた。さっきのピークが間違いなく赤安山と確認できて一安心。山頂は樹林に覆われて登山道の幅しか刈り払っていないので休憩する場所はなく、標識があるこの広場に山頂標識を立てたのも仕方なかろう。

 ザックデポ地に戻って少々休憩。というか、これが本日初めての休憩であった。あの天気だからしょうがない。標高が下がった影響か、それとも時間経過の影響か、空は明るくなり小雨は止んで天候は回復しているようだ。これならこの先は雨の心配はしなくていいだろう。次の烏帽子岩も大丈夫であろう。まさか破線が廃道なんてことはないだろうな。休憩中に2人が登っていった。もう季節は進んで虫がまとわりつくようになり、今シーズン初めて虫よけを使用した。しかし時すでに遅く、足を1か所刺されて痒かった。

こんなに掘れた場所も この辺は籔ツバキが群生していた

 樹林の中を西へと下っていく。かなり掘れてまるで城跡のお堀のようになった場所もあるが、概ね歩きやすい整備された登山道が続いた。次々と登ってくる人とすれ違い、地元では人気のある手軽な山であることがわかる。地形図にあるとおり、598m峰手前の590m峰のならに東側の570m鞍部に登山道分岐が登場。先ほどの赤安山分岐と同じ作り、文字の標識で、直進方向は「村杉温泉、旧スキー場」、烏帽子岩方面は「出湯温泉」。幸い、烏帽子岩方面の登山道も旧スキー場方面と同じくらい明瞭であった。ただ、赤安山の例もあるので今回はロングスパッツを装着し、アタックザックで向かうことにした。

烏帽子岩方面(出湯温泉)分岐 こっちもいい道だった
烏帽子岩。地形図の場所と微妙に異なる 出湯温泉へと下る方面
烏帽子岩から見た弥彦山と角田山

 しかし、拍子抜けするような良好な道で、体に触れる藪はほぼ皆無で、すれ違うハイカーも多かった。登山道は一貫して尾根の北側を巻くように付けられており、小さな沢を横断する個所ではカエルの鳴き声が。尾根に乗って少し進んだところで樹林が開けて花崗岩の巨岩が重なる場所に到着。5合目の標識がかかった場所で、烏帽子岩の標識は無いがこの風景は間違いなく烏帽子岩だろう。だが地形図で確認した場所かどうか自信がなく、GPSで緯度経度を確認すると約100m先だとのお告げが。ただそちらの尾根には露岩は見えず一面の樹林だ。念のため行ってみるがやはり樹林が続き、やがて登山道は下り始めた。どうも地形図の露岩の位置と現実の露岩の位置に違いがあるらしい。正確な位置は490m等高線の先端付近だろう。露岩なので展望はよく、平野の中に弥彦山が立ちあがっているのが目立っていた。残念ながら空気の透明度が悪くそれ以上遠い山は見ることはできなかった。

扇山へと向かう 590m峰の台座
たぶん五ノ峰 598m峰

 ザックデポ地に戻って最後の扇山を目指す。最初の590m峰にはなにやら石の台だけが残っていたが上には何が乗っていたのだろうか。最初はこのピークが598m峰かと思ったらその先に本当の598m峰が登場、急激に高度を落とす。560m峰を越えてなだらかな尾根を下り始めると扇山分岐点は近いのでGPSの電源を入れて山頂位置を確認しつつ進んでいく。扇山の籔の状況を推測するため周囲の植生を見ると、割と背の高いブナ林が多く、これと同じであれば簡単に山頂に立てそうだった。

たぶんスキー場跡。ここで登山道を離れる 扇山まで約200。楽勝だと思ったのだが・・・

 そして樹林が開けた場所が登場、明らかに一度伐採した後に松を植林した場所で、よく見るとすぐ下部に籔に埋もれたリフトがあり、この辺りはスキー場だったことが分かった。スキー場が廃止となり、植林したのだがその後は放置プレーで籔も混じり今に至ったということか。登山道から僅かに入った開けた場所にザックを置き、空身で籔に突入することにした。

松の中に島のようなスペースがある 廃リフト最上部
まだマシな場所 ある程度進むと激藪。山頂まで写真撮影できず

 最初は松の木の隙間が多く、これなら山頂まで楽勝だと考えていたのだが、先に進むと松の木の間は灌木や笹で埋められるようになり、激藪状態となってしまった。最近は残雪期の山ばかりで籔に遭遇するのは雪が落ちた痩せ尾根や急な尾根ばかりだったが、今度の藪は今シーズン初の本格的なものだ。ただ、距離が短いのが救いだ。こうなればGPSと方位磁石で山頂の方向を確認しつつ強行突破しかない。平坦な地形なのでこの籔だと方向を失いやすく、おまけに深い藪で先が見えないこともあって頻繁に方位磁石で方向を定める必要があった。籔が強烈で引っかき傷どころか指に深い切り傷ができて、しばらく血が止まらなかった。方位確認と藪漕ぎに集中していて、デジカメ撮影にまで頭が回らなかったので、激藪区間の写真は1枚だけ。まあ、籔の中で写真撮影しても同じような風景で面白みはないが。

扇山山頂

 山頂目前で尾根直上沿いは高い笹(というより竹に近い。志賀高原の笹と同レベル)の壁と化し、壁に沿って西に向かい、薄い所で笹に突っ込んで突破。その先は灌木と笹の混合籔で、おまけにほぼ平坦地でどこが高いのか分からず、頼りは磁石とGPSの残距離表示だけだ。最後は真北に籔を突っ切り、GPSの距離がゼロになった付近で一番高そうな場所に到着した。北側は杉の植林でやや籔が薄く、山頂部は根曲がりのブナが鎮座していた。目印等一切なく、籔が埋もれた残雪期はともかく無雪期の訪問者は皆無に近いだろう。せっかくなので赤テープを残した。

 平坦な籔なので帰りも上り坂になるまでは方向を掴むのに大いに苦労し、結局は方位磁石を出しっぱなしにして籔を突破した。傾斜が出てきて高い方向が見えれば方向を間違うことは無くなり、やがて隙間の多い松樹林になればザックのデポ地はすぐだった。この低山でこんな短距離でこれほどの藪漕ぎとは、さすが豪雪地帯だ。でも、この籔の主要因は開けたスキー場跡地だからちょっと特殊か。

旧スキー場沿いに下る 朽ちかけたリフト駅
登山道は相変わらず良好 登山口到着
五頭山登山口 菱ヶ岳登山口駐車場に戻る

 予想以上に苦労した扇山で本日の予定は終了。あとは下山のみで籔の無い登山道を下ればいい。道は籔に埋もれたリフトに沿って下っていき、最後は大きくジグザグって旧ゲレンデ下部で車道に出た。車が多く、ここから五頭山に登っているハイカーの多さが分かる。菱ヶ岳登山口はまだ先で、スキー場の建物が残る車道を下り、橋を渡って駐車場に戻ると10台以上車が止まっていた。

 

 

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